■ORDERその9 コインケース(コクーン型)


完成写真ORDERその6で紹介しましたコインケースをご覧になられて、オーダー頂きました。いつも毎回言ってるような気もしますが、今度こそ本当にLEE'S RODUCT至上最大の困難を伴う製作でした。当方の持つ機材での削り込み深さ限界を知りましたしwファスナーの限界も垣間見ましたw
ですが、総じて言いますと色んな意味で現在のLEE'S RODUCTの限界を知るいい機会となった作品でもありました。普段何気なく描いてしまうアイデアがとんでもない方向へと導いてしまう...今後の意匠開発にも一石を投じた記念碑的作品です。
素材は、革:ニッピ社製Aタンロー2mm厚、糸:エスコード(麻糸)白、金具類はメッキシルバー、ファスナーはYKK(金具部はアルミ、テープ部はブラウンを指定)

■制作期間:約3.5ヶ月

■制作費(今後予測):¥31,000

完成写真 完成写真

■STEP01 (オーダー/受理)
コインケース今回の依頼は当方のオーダー作品であるコインケースをご覧になってオーダー頂きました。
このタイプだったらもうノウハウもあるし、楽勝!と思っていたのですが...w

※写真はODER-No.06 コインケース(馬蹄形テイスト)

■STEP02-1 (コンセプト展開)
aideaAメールでの打合せで馬蹄形テイストをベースに
  • 『形はコロンとした繭型』
  • 『腰からぶら下げる』
  • 『開口部は大きく』
という事で基本コンセプトを進めました。

まずはラフスケッチにてスタンダードなA案、別体式のB案、そして馬蹄形という条件からは外れるのですが新しい考え方のC案の3つを提案。もちろんこの段階ではこれに決めて下さいという事ではありませんので合わせ技もOKですし、全く別のアイデア提案を頂くもの問題ありません。このステップはあくまでもコンセプト(方向性)決定のステップです。そして検討結果は

『C案のスタイルでA案の機構は成り立ちませんか?』

という事で、次の意匠提案ステップに進みます。

■STEP02-2 (意匠展開)
完成 繭型のベース部とベルト部のスムーズなつながりが特長のC案スタイルに馬蹄形のスタンダードな開閉機構を併せ持つアイデアを更に3案提案しました。
完成 そしてC案の遊びアイデアとしてファスナーを意匠に取り込んだアイデアも提示しましたので、オマケ的にもう少しだけファスナーアイデアを展開したところ...

『色々迷いましたが決めました!ファスナー縦巻き案で!』

一瞬、『へっ?』って思いました。なんせ本命ではない、超ダークホース案が急浮上です。これには正直、焦りましたw
なんせ賑やかしアイデアですから、まともな構造計画を考えられたものではありません。大慌てで構造計画を立て最終意匠提案へ進めます。もちろんオーナー様には冷静を装いw『出来ないものは提案しません』と大見得を切ります(爆)
もちろんある程度の見込みを見ながらアイデアは出しますから時間は必要でも必ず物になる自信はありました。(相変わらず裏付的根拠は全くありませんがw)

■STEP03 (完成予想図確認→合意)
完成予想図前回のステップから少し時間を必要としましたが、最終意匠提案ステップです。ベルトの長さ修正程度で合意に至り、製作の方に入りました。

※下の画像は1回目の“完成予想図と部位解説図”
完成予想図 ヒンジ ファスナー しきい

■STEP04-1 (DATA製作)
DATADATA製作自体はそれ程問題はありません。繭型の半円形とベルトの平面へ繋がる面をしつこく繰り返しトライ。納得いく面質に仕上げていきました。
■STEP04-2 (木型製作)
木型最初の山場、木型製作です。今回の作品はLEE'S RODUCT至上、最も厚みのある作品となりましたので機械の限界を知る事ができました。
機械の寸法では厚さ40mmまで入りますが、ミル(ドリル)やチャックの形状を考えると、型の厚み30mmが限界です。早くももう一回り大きい機械が欲しくなってくる今日この頃です。今回は型紙合わせて計15点の製作となりました。
左写真はオス型、1発目の荒削りが完了したところ
完成 完成
■STEP05 (製作経過)
型絞り作業今回はまず全体の形状が上手く出せるのかどうかのトライに始まり、ファスナーをどう(正確な位置に)取り付けるか?といった所で試行錯誤を繰り返しました。木型が最高の厚みという事はすなわち絞られる革もこれまでとは比べ物にならないほど変形させなければならないしんどさもあり、本当に自分で言うのもなんですが毎回毎回チャレンジングな事をやってると思います。だから面白いんですけどね。

皺防止絞りながら、出来る皺を何処で逃がすか検討しています。こういう作業を今回は計4回、5回目でやっと本番品を作る事が出来ました。

木型と絞り最初は単純に繭のオス型を作ればベルトへの平面部へスムーズに面が出来上がるかな?と思っていたのですが上手く行かず、この段階でもう一度DATAから作り直し。結果、ベルトへ繋ぐ面は強制的に力を加え面を仕上げています。

材料出揃い木型製作、絞り、と大きな山を一つ乗越えたのでいよいよ次の山、『ファスナー取り付け』に入ります。
写真はほぼ材料出揃いの図、皮革パーツは4点(厳密に言うと6点)と以外と少なめに推移しました。この時点でどうやってファスナーを取り付けるかは未定、色々思い、巡り、悩み中...

木型追加悩みぬいた結果、歪んだ面にファスナーをしっかりと水平に取り付ける為にはゲージが必要と判断し、新たにDATAをおこして木型にて削りだしました。このゲージをしっかりあてる事により、ファスナーを確実な位置で固定する事が出来ます。

縫製ゲージで固定した後、ファスナーと革ケースは両面テープで固定されてるだけですので、仮縫い(ベージュの糸)でしっかり留めておき、本縫いをしながら仮糸を解いていきます。そうする事で、間違いない位置にファスナーを配置します。ちなみにファスナーを配置する時は上下合わさった状態で固定させ、縫う時に上下それぞれ分割させています。

完成一歩手前ファスナー取り付け完了。上下を合わせてスライド動作も問題なし、これで問題点は解決しましたので後は、細かい仕上げとなります。

■STEP-06 (完成)
完成今回は色んなシーンで非常にチャレンジャブルな一品となりましたw
恐らくこういう作品、そうはないと思います。ただ、若干使い勝手が心配ですが...w
オーナー様はライダーという事で旅先でもきっと注目度は高いアイテムになると自負しています。

完成 完成 完成 完成 完成


→オーダーページのTOPへ...