■ORDER No.023 キーケース(Ferrariその4)


完成写真前作に引き続きフェラーリキーケースの制作です。
オーナー様は当初より、No.12のような振り出し式をご希望されていましたが、いつものように素直にはアイデアを出さない性分が今回のアイデアを生みました。
名付けて『ハンバーガーTYPE』といいますか、シンプルにキー本体を挟み込む意匠。また周囲ほぼ360°フリーですので、キーはどちらからでも取り出し可能です。
一見頼りなく見える構造も当方のユニーク素材『生皮』をインストールする事と形状に工夫を凝らし、強度を確保しました。ある程度キーに対してテンションがかかるよう形状を彎曲させてますのでキー本体をしっかりと保持します。またキー本体より一回り大きく作ったケースはよほど尖った物がピンポイントで当たらない限り、外界と直接キー本体が触れることはありません。キーは保護されます。

■制作期間:約2.5ヶ月

■制作費(今後予測):¥24,000(2個目は¥7,600) 

完成写真
(オーナー様ご提供写真)

■STEP01 (コンセプト展開)
まずはコンセプト提案からのスタートです。
振り出し型という事でしたが、せっかくですので考え方の違う振り出しコンセプトを3つほど提案しました。
aidea01コンセプトa案
左右どちらからでも振り出せるよう周囲を囲わないアイデア。今までのキーケースにはない新しいスタイルの可能性あり
aidea02コンセプトb案
振り出しではありますが、1枚革でかつシンプルに仕上げる事で構造的にも単純で丈夫で長持ちでありながら、絞り加工で仕上げる為、立体感もしっかりと出て、さりげない個性を演出できるアイデア
aidea03コンセプトc案
基本構造はオーダーNo.12と同じ構造ですが、若干ラインを流麗にし、区別をつけたアイデア
■STEP02 (スタイリング展開)
上記の再コンセプト提案で『a』案を選択頂き、スタイリングの提案に進みます。
aidea01スタイリングA案
素直にキー形状に添わせた意匠、強度を確保する為のリブを凸形状で表現、キープレートとの隙間も少なく、精度感が出ますが、端面の意匠が若干複雑になります。
aidea02スタイリングB案
キー全体を包み込むオーバル形状で意匠しました。またキープレートを押せ込む為の機能を逆手に意匠とした凹部のデザインが特徴です。端面のデザインもシンプルにまとまります。
aidea02スタイリングC案
上記A案とB案の折衷案的なアウトライン、凸リブもしっかりと塊として表現。またキーホールハトメではなくDカンとし、また違った意匠を提案します。
■STEP03 (完成予想図確認→合意)
完成予想図上記スタイリング提案でさせていただいたB案に決まりましたので、それに基づき最終意匠を制作します。基本は、ある程度製造要件を見越した形状に整えなおしてレンダリングします。キーを振り出す時の軌道も表現し、実際の使い勝手を想像してもらうようにしました。

■STEP04-1 (DATA製作)
DATAキーデータは基本前作のものを利用するので、測定なども不要、もちろんキーを送っていただく事も必要ありませんでしたが、途中キー本体にボタンの無いタイプという事が判明しまして、連絡を密にとり、寸法を確定していきました。結果基本のキーヘッドの大きさに違いはないと判断し、作業を進めました。
画面赤い線がキー形状データ、緑と水色の線が今回のケースデータです。今回は表裏が対称形ですので型は1面のみの制作としました。

完成
■STEP04-2 (木型製作)
木型今回は型紙合わせて計5点の製作です。
片側のみでしたのでシンプルな構成で済みました。

完成
■STEP05 (製作経過)
型絞り作業前回と同じく生皮インサート技法を行います。1mmと0.5mmのオイルヌメの間に0.5mmの生皮を挟み一気に絞ります。今回は外側に0.5mmのオイルヌメを使う事で非常にエッジの効いた革らしくない造形が出来上がりました。左側写真は表と裏の表情、下の写真は絞り加工後3枚にばらした写真です。


型絞り作業

型あわせ今回ブランドロゴはこちら(裏側)にいれさせて頂きました。オーダー品は何処かに入れば良いと思ってますので、ご希望があれば見えなくなるところでも構いません。今回は丁度キープレートが収まる位置にありますから、キーを外してケースを広げれば確認はできますw

裏面加工実は今回切り出しを1回失敗しまして、再度制作をし直しています。型が片側1セットしかありませんので、同時に2個制作とかは順番待ちが発生します。また生皮も乾く為の時間が必要で、時間が更にかかります。こういう事を考えれば同じ型でも最初から2セット制作しておけばと思います。今回の反省点です。

ベルト通しテストコバ処理を残して、ほぼ組み上がり状態です。この方向からのアングルはなかなか絵でも表現し難いので、オーナー様にはいち早く連絡し確認をしてもらいます。

木型と絞り振り出した時のイメージです。今回改めてキーデータでキー本体のダミーを削り出しました。今後もフェラーリのオーダーがあれば活躍決定です。

木型と絞り引き続き赤Verも制作していきます...

■STEP-06 (完成)
完成という事で、今回も無事完成です。今回も前回の教訓を生かし薄い革の重ねに徹したのが項を奏したと思います。ここまでハードなケースを仕上げるには樹脂部品などの科学合成品が必要ですが、生皮を使うことでオール天然皮革(金具類は除き)の作品として謳えます。今回は途中段階でいつもお世話になっている革屋に持っていきました『これが革ですか!?』と驚いて頂き、当方の狙い通りですw
・イエロー革:牛オイルヌメ 赤革:ヴォーノアニリン 糸:赤/黄(麻糸) 金具:シルバーメッキ

完成 完成 完成 完成 完成 完成 完成


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