■ORDER No.015 キーケース(Ferrariその2)


完成写真ORDERその10で製作したキーカバーをご覧頂き、発注して頂きました。
前回フェラーリキーカバーを作るにあたって出したコンセプトの中の振り出し式アイデアに興味を頂きまして、コンセプト提案ステップ無しの意匠提案のフェーズからスタートです。オーナー様はご夫婦でお乗りでキーを2個とも使用する為、同時2個製作を依頼されました。LEE'S PRODUCTSとしては製作費の6割がアイデア&スケッチ、木型作業代、4割を製作作業代で考えておりますので今回の場合、単純に倍のご請求ではなく追加は1個目の製作費の4割程度でご提供する事にしました。今後も基本そういう事でやっていきます。(趣味の範囲のうちはですがw)
今回は1mm厚の革2枚を床面同士を合わせて一気に絞るという手法を初めて試みました。これにより、厚みを増す事無く実際キーの当たる内面も表と同じ質感になるので高級感を演出できたと思います。

■制作期間:約2ヶ月

■制作費(今後予測):¥23,000

完成写真 完成写真

■STEP01 (オーダー/受理)
キーケース左の写真は前回製作したファラーリスカリエッティ用キーケースです。今回のオーナー様も同じスカリエッティにお乗りで、先のオーナー様のH/Pから辿って来られました。やはり乗っておられる車種が車種だけに、今回のオーナー様もオリジナルに対する拘りは半端なく、その気持ち応えられるよう全力であたらせて頂きました。ただ、最近はオーダー待ちをして頂かなければならず、製作は2ヶ月ですが待ちも含め4ヵ月半もお待ちいただきました。
■STEP02-1 (コンセプト展開)
aideaA
スタンダードA案 / 筒型収納B案 / 振り出し式C案 / カバー+ケース別体式D案

上スケッチも前オーナー様に提示したコンセプトスケッチです。前オーナー様はA案をチョイスされましたが、今回は『この中でA案以外で選択してよいのなら』という事でC案の振り出し式をチョイスされました。フルオーダーは一品生産が身上ですからコンセプトが違えど、出所は同じという事で前オーナー様とも念の為擦り合わせをして万全の体制で製作に入ります。
ですので、実際コンセプト選択のフェーズはスキップですw

■STEP02-0 (意匠展開の前に...)
aideaA aideaAaideaA
意匠展開前にオーナー様がどれ位の(振り出時の)穴が開くのか?という懸念を払拭する為の事前情報を展開させて頂きました。
キー本体の形状はDATAとしてストックしてあるのでこういう図も容易に製作できます。

aideaA aideaA
キー本体の穴を振り出すための軸に使ってしまう為、ケースにキーホールの機能を設ける必要があるという意味で上のようなスケッチを描いたのですが、ケース本体にキーホールを設けると、そこに繋げるキーホルダー等の重量をケースそのものが受けてしまい耐久性に不安があるというオーナー様の声をうけ少しひらめきました。キー自体を振り出すための軸とキーホール機能を一つにまとめるアイデアです。この金具は『ネジ式Dカン』という本来はバッグなどの取っ手の根元に使われる金具です。ネジによって軸がセパレートになるというのを利用し、その軸は振り出しの回転軸に、U字金具はそのままキーホールの役目を果たします。最終意匠はどうであれ考え方の提案ですから、とりあえず手元にある金具と木型を使ってイメージを伝えました。
■STEP02-2 (意匠展開)
aideaA aideaA aideaA aideaA
スタンダードA案        オリジナルB案         汎用型C案             スタイリング重視D案

事前に検討した内容も含め意匠展開に入ります。ここから色々組み合わせてもう一ひねりかな?と思っていたのですが、奥様が気に入ったとの事でB案ストレートです。世の奥様強し!?なんでしょうか?いやいや愛妻家なんですね、きっと、、、w
その後、オーナー様と連絡を取り合い、お気に入りのネジ式Dカンも無事ゲット。最終意匠のフェーズに入ります。

■STEP03 (完成予想図確認→合意)
完成予想図最終意匠です。当初からDATAを使って回転域などのシミュレーションを行ってますのでほぼ正確なバランスで書き上げています。というか、実はこの時点で頭の中では作業シミュレーションも完成しており。『これなら作れる』という所まで仕上げています。オーナー様に提示するという役目ではありますが実は自分自身への確認の意味も大きいです。下の図はサイドのスリット形状の検討です。振り戻す時の収まりを懸念されましたので、軽く導入させる形状のA案、思い切って変化の大きい部位を取り除くB案としました。結果B案の方向で作業開始です。
完成予想図白ライン&切りかき

■STEP04-1 (DATA製作)
DATA木型はなにも最終意匠の形をしているわけではありません。今回は振り出し開口部の端を綺麗に整える為、ある程度切り捨てる部位も含め木型DATAとして製作します。

※下の画像は振り出し開口部を切り出す為のガイドDATA
切抜用ガイド

■STEP04-2 (木型製作)
木型今回は木型、型紙合わせて計8点の製作です。
完成
■STEP05 (製作経過)
型絞り作業相変わらずアナログな風景ですが...w
明るい色の革は押さえた所が変色(濃くなる)しやすいので力のかけ具合や時間等シビアにやるのですが、黒革は変色の跡がわかりませんから(おそらく明るい革とと同じ様な変化はおこしてるとは思いますが)そういう所を神経質にしないで心置きなくしっかりと押さえ込めるのがいい感じですw

皺防止型から抜き出したところです。今回は普段の2mm厚の単板絞りではなく1mm厚の革を床面(裏面)同士で合わせ一気に絞りました。トータルの革の厚みを変えずにキーの当たる内面も表面と同じ革質にする事で、高級感、保護力アップを狙います。

木型と絞り外面、内面にそれぞれ分離した様子です。この後、お互いの床面(裏面)に硬化剤を塗り、固まる前に張り合わせ硬化と接着を兼ねます。この間の作業は時間との勝負ですので撮影している暇はありません。あしからず...

材料出揃い当方の作風として立体的に裁断しないといけない場所はまま出てきます。一気に出来そうな時はフリーハンドでやってしまいますが、今回のように長い面が相手の場合には写真のように専用のゲージを起し、それをガイドにし裁断します。実を言うと当方革裁断は極普通のカッターナイフで行っております。(刃は特撰黒刃というよく切れるものをチョイスしてますが)革包丁なるものも持っていますが、あまり上手く使いこなせてませんw
ちなみに下の画像は切り出した後、破片をなんとなく並べてみたものです。
完成
■STEP-06 (完成)
完成相変わらず張り合わせ以降の作業画像がありませんが、完成ですw
オーナー様には大変満足と一報を頂いております。 LEE'S PRODUCTS初のギミックのある作品なので正直なところ耐久性が不明なところもありまが、サポートはしっかりしていきますのでご安心ください。

・黒/ 革:牛オイルヌメ黒 糸:自家染麻糸黄色 金具:シルバーメッキ
・赤/ 革:牛オイルヌメ赤 糸:自家染麻糸赤色 金具:シルバーメッキ
※ネジ式DカンはこちらのSHOPから購入しました→ナスカン・金属雑貨 にのきんショップ
完成 完成 完成 完成

■STEP-X (アルミカラー製作)
DATA今回セレクトしたネジ式Dカンとキー本体の穴径が合わなかったので別途アルミカラーを製作した。
製作していただいたのは“LATE”というバイクショップで、当方のなじみ(といっても距離的に頻繁に通える範囲ではないが)でもある。今回は恐ろしくピッタリはまるカラーを製作して頂いた。将来的には当方も小さな旋盤くらいは揃えて自家製といきたいところだが、しばらくはプロに任せるほかない。メンテナンスの腕もピカ一なのでご近所のバイク乗りは是非尋ねてみては如何だろうか
左図は当方が発注をかけた時に送った資料、下写真が完成したものをネジ式Dカンにはめ込んだもの

DATA

→オーダーページのTOPへ...