■ORDER No.019 スマートフォンケース(2段仕込)


完成写真昨今は携帯も1人2個持ち3個持ちが当たり前の時代。
今回はそういうオーナー様から
『会社と個人持ちのスマートフォンを1つのケースに収めたい』
というご依頼からスタートです。2個を重ねるアイデアを何通りか出させて頂いて、比較的オーソドックスなアイデアをご選択頂いた分、直球ストレートな意匠は超深絞りケースカバーとなり、今回のデザインの最大懸案ポイントとなりました。まぁいつもながら綱渡りで設計/製作してしまうLEE'S PRODUCTSがプロになれない所以がこの辺りにあるような気がします...w
革は表カバーにナチュラル(ニッピ社製タンロー1.5mm)中のポケットにはオイルヌメ黒2mmと最近限定色で入れましたヴォーノアニリン赤2mm、背面は同じくヴォーノアリニン赤(1mmと2mmの張り合わせ)を使用。糸は麻赤と黒を使用。金具はアンティーク、今回はユーロホックというロック機構付のホックを使用、引っ張るとロックが外れる仕組みです。在庫はしませんが一応定番金具としていますので気軽に問い合わせ下さい。

■制作期間:約2.5ヶ月

■制作費(今後予測):¥28,000 刻印製作¥5,000(デザイン料込み)

完成写真 完成写真

■STEP01 (コンセプト展開)
まずはコンセプト提案からのスタートです。縦に2個重ねて腰からぶら下げるというオーダーを元に基本はケースの開き方(取り出し方)を中心に展開していきました。
aidea01コンセプト01案

単純にポケットを2つ重ね、その上からカバーするタイプ。I-phoneとDOCOMO製スマートフォンにサイズ差があるため、それをどうやってカバーで吸収するか?また2つの携帯をカバーする為、深くなる絞りが課題です。

aidea02コンセプト02案

中心に1枚通したベルト付ベースに対し表裏にポケットを設けるアイデア。このままでは身体側にきたポケットに対するアプローチが難しいのでベースとベルトの間に回転カンをつけるなどの工夫が必要です。

aidea03コンセプト03案

LEE'S PRODUCTSのコンセプトには採用率の高いファスナーアイデアです。ファスナーというのはケースとしての密閉性と使用時の取り出し易さの両立という意味では便利なアイテムと考えています。今回のアイデアは仕切り板を間に挟み搾ったカバーを両サイドから挟み込むスタイルとしました。ファスナーで大きく開口部を設けることができる事と、密閉性が高いのでそれほどフィット感は必要としなくてもよいという割切りから来る汎用性の高いアイデアです。

aidea04コンセプト04案

絞り加工を有効に利用したアイデア展開です。それぞれがポケット兼カバーとなり、繋ぐ事で一体感のあるケースとしています。また万が一開いた場合でもそれぞれの携帯が脱落しにくくなるようポケットの方向も考えています。若干取り出しにくくなる事も考えられますが、そこはホールド性と取り出しやすさの天秤になると思います。

※上記以外に数点ご提案した絵もあるのですが、今回ストーリーには触れない為、割愛しますw

■STEP02-2 (意匠展開)
上記コンセプトを確認頂き、基本01案という事でしたのでプロダクトに落とし込んだらどういう形になるかという事でスタイリングを2つの方向(というか1つは派生みたいなものですが...)で提案させて頂きました。
stylingA stylingB
スタンダード案 大胆穴あき案
ご選択はスタンダード案でしたが、大胆穴あきバージョンの要素も加えたいという事で、相談しながら最終意匠に進めます。
■STEP03 (完成予想図確認→合意)
完成予想図最終意匠です。基本は上記スタイリング提案でさせていただいたスタンダード案に大胆穴あき案の要素を加味しイヤホンコードを避ける為の開口部となりました。合わせてi-Phone用ポケット底部にイヤホンジャックを避ける為の穴を追加しております。また今回はオリジナル刻印も合わせてご依頼頂き、i-Phone用ポケット上に刻印を施しました(普段見えないのは残念ですがw)

■STEP04-1 (DATA製作)
DATA最終意匠案でほぼ立体的な検証はできていますので3Dデータの移行は比較的スムーズでした。今回は2重ポケットと蓋の関係、ユーロホック(メインのロック金具)周りの確認を念入りにした後、木型製作に移行しています。
■STEP04-2 (木型製作)
木型今回は型紙合わせて計16点の製作です。
下の画像はそれぞれの絞りパーツ。右は、やはり当初から懸念していた革絞りで革にヒビが入り、厚みを2mm⇒1.5mmに変更して対処しました。

完成 完成
■STEP05 (製作経過)
型絞り作業まずは中のポケットの接合から、搾り出されたパーツを合わせてサイズや位置の確認です。この後(オリジナル刻印を施し)接着、縫合です。

皺防止ポケットと背面ベースとの接合です。革の銀面(表面)は接着剤がつき難いので接着部を荒らす必要があります。写真の白っぽく見える部分(黄色矢印部)は革表面をカッターの刃で荒らした跡です。

木型と絞りベース背面と接合です。このあたりはまだまだ試行錯誤なのですが、やはり端面はそろえて切り落とした方が面が揃うし、後でヤスリ加工等の手間が省けると考えますが、表裏の位置決めが難しいという問題も残ります。特に裏面に何も無ければ適当なサイズで切り出した後、適当に貼り付け切り落とせば良いのですが、今回は裏面にはベルトが着くので(これは張り合わせる前に取り付ける必要がありました。)それもできません。という事で今回はケース下部にあるカシメ用の穴(矢印BC)とケースを止めるユーロホック周りの1部(矢印@A)をそれぞれ切り出して、そこを合わせポイントとしました。

木型と絞り裏面です。先にベルトを装着し、張り合わせる事で内側には金具を露出させない工夫をします。今回使った位置合わせの方法で上手くいけたと思いますが、もっと賢い方法はないか?誰かアドバイスありましたら宜しくですw。

木型と絞り背面部は縫合も済ませ、下部を残して切り出しも完了です。蓋側もユーロホック周りは切り出し完了しています。実はこの時点でかなり悩みました。先に接合させてから一気に切り出すか?それぞれを切り出してから接合するか?。結果は写真の通り折衷案でした。
最後に縫合する下部は接合してから一気に切り出す。残りは接合前に切り出しておくという結論です。ただ現時点ではこれがベストとも思えません。これからも試行錯誤していくんでしょうね...w

■STEP-06 (完成)
完成張り合わせ後、下部切り出しを行い、コバ処理を施し完成です。
基本スタイルは片側絞り(ベース面は平面)と、一般的な絞り作品と変わらない方向ですが、あまり革作品には無いC面(斜め面)処理だったり、ユーロホックを逃げるザグリだったりと意匠的にはLEE'S PRODUCTSらしさを施した一品になったと思います。オーナー様にも『非常に満足』と一報を頂いております。(下画像右2枚はオーナー様撮影)
・黒革:牛オイルヌメ 赤革:ヴォーノアニリン ナチュラル革:ニッピ社タンロー 糸:赤/黒(麻糸) 金具:アンティーク

完成 完成 完成 完成 完成 完成 完成

■STEP-X (刻印)
DATA今回は刻印を用命頂き製作させて頂きましたが、刻印した場所が場所だけに『せっかくの』という思いがありまして、当然おまけはこれですw(裏にはお名前をオリジナルフォントで刻印させて頂きました)
DATA刻印の意匠に関しても基本の想いを伝えて頂ければ何通りかの提案をさせて頂き、仕上げていきます。今回はポンチ絵を送って頂きました。当方革工作はシロートですが、その道ではプロですから頂いた絵から想いを汲み取る事は可能です。これからご依頼される方も遠慮なく絵を描いて想いをぶつけて頂ければと思います。
下の画像は左から、オーナー様から送って頂いた直筆画。当方提案のカニの意匠3パターン。同じく数字との配置例3パターン。それぞれで打合せを行い、上記画像の意匠に決定しました。 DATA DATA DATA
DATAちなみに当方の持つ最細工具、エンドミルφ0.3mm(直径0.3mmのドリルと考えて下さい)で刻印を彫っている図、肉眼ではどう動いてるのかすら確認出来ません(動画でお見せできないのが残念ですw)
(※しかもこの写真、大失敗をしているのですが...さて何を失敗してるのでしょうか?)

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