■ORDER No.022 キーケース(Ferrariその3)


完成写真鞘+ベルト型キーケースです。
全面に生皮をインストールする事で形状を維持させ、キー本体をホールドする性能を上げています。
またケースとキー本体をベルトで繋ぐことで連動性を持たせ、キー使用時のケースの紛失を未然に防ぎます。
黒いケースは内側に豚ヌメ黒1mm厚、表に牛オイルヌメ黒1mm厚、その間に生皮0.5mm厚。
赤いケースは表裏ともにヴォーノアニリン革(ワインレッド)1mm厚と生皮。ともに計2.5mm厚のケースです。特長は裏面のベルトを通すケースの形状で、もちろんこの形状の中には隅々にまで生皮が入っていて通常の革工作では決して成型できない形状だと思います。
成型方法は内革/生皮/外革を3枚重ねして一気に絞り込む手法をとりました。従来使うMDF材では革の張りに負けて木型が変形してしまったので特にオス型には樹脂を使用し、3重革の張りに負けないよう工夫しました。

■制作期間:約2.5ヶ月

■制作費(今後予測):¥28,000(2個目は1個目の4割) 

完成写真

■STEP01 (コンセプト展開)
まずはコンセプト提案からのスタートです。
当初は振り出し型を決めておられたようですが、せっかくですので振り出し+3つほど考え方の違うコンセプトを提案しました。
aidea01コンセプトa案
振り出しではありますが、1枚革でかつシンプルに仕上げる事で構造的にも単純で丈夫で長持ちでありながら、絞り加工で仕上げる為、立体感もしっかりと出て、さりげない個性を演出できるアイデア
aidea02コンセプトb案
使用する時はキー単体で使用し、キーシリンダーに優しい!?アイデア。使わない時に使う、拳銃のホルスター、刀の鞘みたいな位置付けのアイデア
aidea03コンセプトc案
ケース中央に大胆にファスナーを走らせるアイデア。ファスナーを使う事でしっかりとカバーする事ができ、かつ取り出し易いケースになります。
aidea04コンセプトd案
キーヘッドから差込み、キー先端をバンドで留めて固定するコンセプト。革をしっかり固形化させ、キーをしっかりとホールドさせます。生皮をインサートして形状をしっかり維持させる事で実現可能なアイデア
■STEP01(2nd) (コンセプト再展開)
上記のコンセプト提案で『b』案をベースにキーとキーケースが離れないようなアイデアは無いか?
(例えば筒型キーケースのような)という希望に対し以下の2点を提示。
aidea01アイデア01案
スタイリング&収納スタイルを変える事無く、ベルトを取り付けることでキーとの連動性を持たせたアイデア。ベルトを一旦MAXで引き出す事によってキー全体をキーケースから出させた後、少しベルトを戻した位置で固定する事で、使用時にキーとケースとのよいバランスを保つ。
aidea02アイデア02案
01案とあえて対峙させるために、オーソドックスな筒型キーケースをLEE'S PRODUCTSなりのエッセンスを入れたスタイルで提案したアイデア
■STEP02 (スタイリング展開)
上記の再コンセプト提案で『01』案を選択頂き、スタイリングの提案に進みます。
aidea01スタイリングA案
ほぼアイデアスケッチの意匠を踏襲、余分な肉をそぎ落とす様なライン取りはキーヘッドからキー先端にかけて描くカーブがダイナミックなラインを描きケースに動きが生まれます。
aidea02スタイリングB案
上記STYLEAとは対照的に曲線を基本に使いながらもスタティックなイメージに仕上げる考え方。
張り方向の曲線で構成する為、剛性感、安定感が生まれます。
■STEP03 (完成予想図確認→合意)
完成予想図最終意匠です。基本は上記スタイリング提案でさせていただいたA案に決まりましたので、ある程度製造要件を見越した形状に整えなおしてレンダリングします。キーを抜く時の軌道もアウトラインで表現し、実際の使い勝手を想像してもらうようにしました。

■STEP04-1 (DATA製作)
DATAキーデータは基本前作のものを利用するので、測定なども不要、もちろんキーを送っていただく事も必要ありません。
画面赤い線がキー形状データ、黒い線が今回のケースデータです。
■STEP04-2 (木型製作)
木型今回は型紙合わせて計11点の製作です。
これはいつもなんですが、最初はセコく兼用で済まそうとするんですが、結果よいものにならないので、追加で作ってしまうパターンですw右の画像の点数で済まそうとした結果が、下の画像の点数になりました。

完成
■STEP05 (製作経過)
型絞り作業革を3枚合わせにして絞り、乾燥後3枚をばらしてみました。裏面は早々に穴を開けて、ベルトの通り具合などを確認、下画像は表側の3枚分。
生皮は元より、1mm厚のヌメも素直に絞られてますが...


型絞り作業

型あわせ作業中盤、オーナー様のご好意でキーを送って頂きました。
やはり判っているとはいえ、こうしてそのものと合わせる安心感はなんともいえません。
今回ももちろんバッチリあっています。

裏面加工何回か絞ると、MDF材(木材)ではしっかりと形を搾り出す事が難しくなって、オス型を樹脂製に変更(画像白いものがそうです)これで100回絞っても形状変化はおきません。ただし欠点として水分を吸収してくれないので乾くまでの時間が遅くなります。また生皮も乾く為の時間が必要で、乾燥時間が更にかかります。

ベルト通しテストベルトを通して具合をみます。

木型と絞り平行して赤Verも進めます。メス型も新しくおこしなおして再トライです。

木型と絞り相変わらず、組立て部分は殆どすっ飛ばしてしまいますがwほぼ、完成です。ベルトを動かして具合をみます。

■STEP-06 (完成)
完成という事で、今回も無事完成です。今回はこれまで拘ってきた革厚を割り切り1mmに徹したのが項を奏したと思います。ここまでハードなケースを仕上げるには樹脂部品などの科学合成品が必要ですが、生皮を使うことでオール天然皮革(金具類は除き)の作品として謳えます。ちょっとした拘りですが...w
・黒革:牛オイルヌメ 赤革:ヴォーノアニリン 糸:赤(ナイロンボンド糸) 金具:シルバーメッキ

完成 完成 完成 完成


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