■ORDER No.020 リモコンカバー


完成写真当方アイデアスケッチを描いていくと従来の手法ではできない絵をよく描きます。普段であればボツとなるアイデアも、もう少しだけ考えていくとこうやれば作れるんではないか?というひらめきが出る時がありまして今回は何度かのトライの末、完成した作品となりました。これは当方の技術向上に繋がる大事なことでもありますので、できる限りそういう思考で今後も製作にあたりたいと考えています。
また今回はちょっとした工夫とオーナー様のアイデアのコラボといいますか、ボタン表記部分での工夫もありまして、やはり一人で悶々と考えるよりも色々な考えを吸収消化していく過程も大切だなぁと思い知らされた作品となりました。最近はオリジナル作品中心にシフトしなければという想いもありましたが、このフルオーダーもLEE'S PRODUCTSが進化していく為の魅力的な素材が詰まっているなぁと改めて思い知らさせれまして、またまた悩みが色々増えそうな予感ですw
素材は
【1個目】革:キャメルブラウン、糸:ベージュ、金具:アンティーク
【2個目】革:ナチュラル、糸:グリーン、金具:アンティーク

■制作期間:約2ヶ月

■制作費(今後予測):¥22,000 (2個目は1個目の4割)

完成写真 完成写真

■STEP01 (オーダー/受理)
キーケース左の写真は今回依頼頂きましたカバーに入れるリモコン本体です。後付で取り付けるタイプの自動施錠開錠する為のリモンコンだそうで、こういうものがあれば旧車乗りの方も便利になっていいですね。なので当然専用のカバーなるものもなく、当方にジャストフィットするカバーをご依頼頂きました。
■STEP02-1 (コンセプト展開)
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01スマートキータイプ案       02ホック蓋付案            03開閉カバー案

いつものようにまずは大まかな方向性の握りからスタートです。定番タイプから発展系まで3つを揃えました。02のアイデアはオーナー様からのリクエストをLEE'S PRODUCTSなりに解釈を入れ提案とさせて頂いています。はっきり『こういうものが作りたい』というお客さまより『こんな感じなんだけどLEE'S PRODUCTSという変換機をかけたらどうなるんだろ?』というお客様の方がより一層楽しめるのではないかと思います。悪くいうと客の言う事を素直に聞かない工房という訳で...w
結果は01のBタイプ(1枚革製作Ver)をセレクトされましたのでその方向でスタイリングを進めていきました。

■STEP02 (意匠展開)
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カシメ2箇所A案        カシメ4箇所B案         ヒダ無しC案

3つの方向性をお出しするもののLEE'S PRODUCTSとしてお勧め方向は提示させて頂いております。もちろんあくまでもお勧めですので選択の参考にしていただければ良いと考えていますので、オーナー様がセレクトされた案に対しての反抗はありませんw
基本どれがきても作れる(作りましょう)というスタンスで提案させて頂いてますので、その辺りは遠慮なく選択して頂ければと思います。この時点ではBということで最終ステージに突入しましたが...

■STEP03 (完成予想図確認→合意)
完成予想図完成予想図最終意匠です。上記スタイリング提案でBをご選択された理由がボタン表記のあしらいが良かったのではないか?という判断でA案のスタイリング(当初よりスタイリングはA案思考でしたので)でBのボタン表記を表現したものに純粋にB案スタイルをプラスしたものをご提案。更に『LEE'S PRODUCTSらしさで言えばBですね』とアドバイスさせて頂き、無事!?B案の方向で作業開始です。
左画像は最初A案ベースのレンダリングにB案を混ぜましたが(向かって左)B案をセレクトされた時点でB案での全方位のイメージに修正しました(向かって右)

■STEP04-1 (DATA製作)
DATA木型データを作る前に基本はベースになる個体(今回はリモコン本体)そのものをデータ化した後、木型用にデータアレンジを施していきます。デザインは当初より本体の形状に関係なく一体サーフェイス型を決めていましたが、まずは本体の形にしっかりとフィットするかどうか検討した上で下の図のように一体型の木型データを製作します。
DATA

■STEP04-2 (木型製作)
木型今回は木型、型紙合わせて計8点の製作です。
(失敗、トライ品は含まず)
完成
■STEP05 (製作経過)
型絞り作業型絞り作業DATA
今回是非紹介したい内容は2つ、そのうちの1つは『2段絞り』と命名しましたが、もし既に試されてる方がいて『オレは○○と言っている』という事であればご連絡下さい。そちらに改名しますw
と思ってる位、革絞りの世界ではあまり見たこと無い手法だと自負します。板金プレスの世界では1回でプレスできない形状も2回に分けて行う事で可能にする手法がありまして、それを今回革絞りに応用しました。
通常、革絞りというのは縦なら縦、横なら横とどちらか1方の圧力により形状変化を与えるのですが、今回提案の形状はそのどちらにも形状変化を必要とする形となっています。(キーホール周りがそうなっています)そこで絞りを2ステップに分けて加工する事を思いつきました。 通常であれば上図右の概念図のように単順に2つ折した革を上下で挟んで加工してもヒダの部位が突き出して出来てしまい、絵のようになりません。(当方のオリジナル作品、ZIPPOライターカバーがそういう手法で作成されています。)ですので先に先端部の成型が必要になります。そして通常の絞りをかけて最終形状に持っていくというのが今回トライした2段絞りです。写真左と真ん中を見て頂ければ解ると思いますがステップ1は先端形状の形成です。2つ折した革を溝にはめ込みその中にオス型をはめ込んで押し込みます。こうする事でまずは先端部の成型を完了させます。この後は右の図にもあるように通常の上下挟み込みでカバー全体の形を成型します。今回は物が小さい事もあり、効果は少ないかも知れませんが今後大物手がける時に威力を発揮すると思います。ただ問題が無いわけでもありません。通常の絞りでさえ革に相当な負担をかける訳ですからこの2回も(厳密にいうと2つ折の所も入れると3回)絞りにかけるのは相当な負荷です。実質明るい色の革ですと圧力による色変化は否めません。今回も多少出ている部位もあります。(何度かのトライでかなり減らしてはいますが)黒や濃い色になればある程度遠慮なく加工できますので2段絞りは色の濃い革前提で進める方が良いかと考えます。

皺防止そしてもう1つはこれ、カシメ IN SIDEですw
スタイリング提案の時に、ボタン表記加工の変わりにカシメを打ち込んでボタンを押しやすくするアイデアを提案した時に、オーナー様から『更にその上にボタン表記したものを被せられませんか?』というアイデアを頂きまして、当方『なるほど!』とw2つ返事で対応しました。
確かにカバーを被せるといくら表記を施してもその下のボタンは押しにくくなります。いつもそういう矛盾を抱えながらなんとかしたいと常日頃考えた結果が一気に完成形にまで持ってこれたような気がして嬉しい瞬間でした。今後オリジナル作品にもオプション展開していきたいと思います。

■STEP-06 (完成)
完成今回は製作過程というよりも新しい試みのご紹介という感じでしたが、無事完成です。

・革:牛オイルヌメキャメルブラウン 糸:ベージュ 金具:アンティーク
・革:ニッピタンロー革(ナチュラル) 糸:グリーン 金具:アンティーク

完成 完成 完成 完成


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