■ORDER No.017 キーケース(ALPINA)


完成写真ALPINAとはBMW車をベースとしたチューニングで有名な会社。現在では本家のBMWも公認するほどの実力。
今回はそういう拘りの1台をお持ちのオーナー様です。キーケースをご希望でALPINAの内装であしらわれる2色のステッチ(ブルー&グリーン)を使用してデザインをまとめて欲しいというオーダーでした。当初はこの2本のステッチが効果的に配置できるデザインが思い浮かばず、悪戦苦闘したのですが、そこはなんとかw搾り出しまして、観音開きというアイデアに行き着きました。製作自体はそれ程困難ではなかったですが、今回は設計で泣かされました。

■制作期間:約2.5ヶ月

■制作費(今後予測):¥28,000

完成写真 完成写真

■STEP01 (オーダー/受理)
ALPINA内装左の写真はALPINA仕様の内装です。基本は革張りでステッチはブルーとグリーンのコンビネーションであしらわれています。今回のオーナー様はこのステッチに拘りを持ってオーダー頂きました。単純に青と緑のステッチが使われるのではなく、なんとかこの2色の組み合わせが生かせるような形はないかという事でスタートです。
■STEP02-1 (コンセプト展開)
aideaAコンセプトA案

まずは当方の定番でもあります、スタンダードな片開き提案。としながらも下にはしれっと漢音開きアイデアがあります...

aideaAコンセプトB案

ファスナーを使用したアイデア、ファスナーの左右に2色のステッチを配色するのは当たり前として、ファスナーの金具部、ファブリック部もオーダーで青/緑の配色を施す事も可能というアイデアです。

aideaAコンセプトC案

基本は世間で言う“筒型”としながらも、キー形状を生かし中央部に括れを持たせ、収納時/使用時それぞれでケースとの密着性を上げ、収まりの良いアイデアとしました。もちろん左右のひだがそれぞれ青/緑ステッチです。

aideaAコンセプトD案

当方のオリジナル作品である“スマートキーカバー”に通じるアイデアです。引き抜く形で使用します。しかしこれは2色ステッチが全く生きないアイデアですね...

※上記スケッチは最近購入のこういう武器でしたためましたw

■STEP02-2 (意匠展開)
上記コンセプトを確認頂き、A案かB案かという事でしたので、それぞれを実際のプロダクトに落とし込んだらどういう形になるかという事でスタイリングを3つの方向で提案させて頂きました。でも流れから言うと再コンセプト確認ですねw
stylingA stylingB stylingC
観音開き案 ファスナー案 従来案
前回のコンセプト提案時点で既に観音開きで決心されていたようで、ズバッと“観音開き”案で決定です。
個人的にはファスナー案も捨てがたく...どなたかチャレンジされる方はいませんか?w
とはいうものの、漢音開きも初チャレンジな構造です。がんばらねば!
■STEP03 (完成予想図確認→合意)
完成予想図最終意匠です。扉部の合わせ部やスナップの止まり方、内側の形と外側の形、若干見込み部分もありつつも最終意匠をしたためます。ステッチは全てを2色に振り分ける事はせず、あえて扉の両サイドのみに絞り、残りは黒としました。このほうがこの2色のテーマ性を強調できるという判断です。ちなみに下の図は全てのステッチを青と緑に振り分けた場合のイメージです。ちょっとやりすぎ感があると思います。
完成予想図白ライン&切りかき

■STEP04-1 (DATA製作)
DATA今回は初の試みの観音開きなので、DATA作りは慎重に進めます。まずはブロッキングで大まかな外形を作っていきます。
DATA赤い部分はキー本体です。こうやって中身との干渉も考慮しながら細部を詰めていきます。
DATA開閉する為のヒンジ部やキーリングの切り欠きも入れ、ほぼ完成状態です。中身は見えてませんが、この時点で殆どの形状が出来上がっています。ここから展開し、各木型用のDATAにしていきます。
DATA表革、内革、表面の展開DATAです。このままでは木型になりませんので枝葉をつけて木型DATAにしていきます。
■STEP04-2 (木型製作)
木型左写真は表面用の木型、同じものが3つあるように見えますが、センターは裏表面、両サイドは表の扉部ですので半分は捨て用です。型紙合わせて計12点の製作です。
完成 完成
■STEP05 (製作経過)
型絞り作業上記の木型から搾り出した表面パーツを切り出していきます。両サイドに切り出された革は残念ながら廃棄です。最小限の革で製作すると、こういった切り出すための線にも影響が出ますから、ある程度余裕を見て材料取りや木型製作を行います。こうやって見てもらえると革作品というのは実際に手に取るもの以上に革を使って作られている事が理解していただけるかと思います。

皺防止各パーツ、切り出しも完了し、まずは背面部から接合していきます。写真はまだ軽く合わせただけのもの

木型と絞り背面部は縫合も済ませ、キーホールも設置しました。表蓋部の張り合わせも完了し、ここまできたらあと一息です。

■STEP-06 (完成)
完成相変わらず張り合わせ以降の作業画像がありませんが、完成ですw
オーナー様には理想通り!と一報を頂いております。

・黒/ 革:牛オイルヌメ黒 糸:ブルー/グリーン/黒 金具:シルバーメッキ

完成 完成 完成 完成 完成

■STEP-X (糸)
DATA今回は糸の色指定がありましたので、少しだけ慎重に作業を進めました。色というのはネットを通してやり取りすると必ず誤差を生みますから、自らが実物で確認して合わせる必要があります。ALPINAを扱うディーラーに出向き、何台か実際見せて頂き色を決めました。その時は写真のカラーチャートを持ち出し、実際の色と合わせて決定しています。
DATA上記の色を決めたチャートを今度は手芸屋さんに持ち込み糸と合わせていきます。流石に同じ色というのはありませんから、近い色を選択して購入します。使用する革と合わせて撮影しオーナー様にも報告します。
DATA当然、糸が沢山余りますので、おまけはこれですw

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